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【日本代表、イングランドに逆転負け】

17日はトゥイッケナムで日本とイングランドのテストマッチ取材でした。

フォトグラファーはキックオフの4時間前に集合。

撮影位置、wifiおよびLANケーブルの配置、移動の動線、チームバスの到着を取る場合の位置と時間、そして日本のカメラマン一同には、日本が勝った場合の集合写真を取る位置とそこへ移動するタイミング、メディアミールの提供時間……などなど、本当に細かいことまでのブリーフィングが行われました。

「ワールドカップでもここまで細かいのはなかったよ」とみなさん口を揃えました。

イングランドのプライドを感じました。

 

そして試合に詰めかけた観衆は81151人。

日本代表のみならず日本のラグビーにとって、史上最多の観衆のもとでの試合となりました。

……日本は前半、相手のシンビンにも助けられ、中村亮土選手とリーチマイケル選手のトライなどで15−10とリードして折り返しました。

しかし後半は、じわじわとイングランドに攻め戻され、後半19分に逆転トライを奪われ、ラスト20分にはさらに2トライを献上。最終スコアは15−35まで開いて敗れました。

 

イングランドは後半になってもしばらくは自分たちのペースで試合を進めることはできず。後半11分には、PKからのタッチキックで日本陣の深いところまで入っていながら、ラインアウトをクイックで入れる、まるで日本のように体格で劣る側のような仕掛けをあえて試みて失敗。このへんまでは、3年前の南ア戦を思い出す展開だったのですが……ディフェンスである程度まで頑張っても、どうやって点を取ろうとしているのかがなかなか伝わってこない試合でした。

終わってみると、ハーフタイムのSH田中選手から流選手への交替はちょっと早いなという印象を受けましたが、ジェイミーHCは「予定通り」と説明しました。フィジカル勝負に来るイングランドに対して消耗度が激しくなるFWのリザーブを通常より1枚増やして6人とし、早め早めに交替のカードを切っていく作戦で、ジェイミーHCは「うまくいった」と自賛。田中選手も前半での交代は「予定通り」と話しました。前半だけで出し切る覚悟だったからこそ、あれだけ激しくリードできた面もあるかもしれません。

日本代表はここまでは、どんな強敵にも戦えるよう、アンストラクチャーな状況を作るためのゼネラルな戦い方を指向してきたと思います。そこから、相手によって、状況によって戦術オプションを微修正していく段階に入ってきた。しかし、本当の強敵に勝つには、試合の流れを読んだ采配や、ギリギリの場面で絶対に相手を倒すディフェンスの精度や、練習で決めたことのある位置のキックは絶対に外さないという精度といった、特別な要素が求められてくるんじゃないかなと思いました。ほんの少し、こちらに傾きかけた流れを決して逃さない嗅覚と集中力といえばいいのか。それはもはや一般的な領域ではないでしょうが……でも2015年の南ア戦の勝利や、競技は違いますが2011年のなでしこジャパンの勝利なんかはそういう領域に入って戦ったからこそ特別な結果が出たのだと思います。あれらは決して一般的な戦いではなかった……だからこそ、エディーさんは常々「Xファクターが必要」と言っていたのだと改めて思います。

ものすごく難しい注文だと思います。ですが、ラグビーで世界のトップ8に入ったことのない国が新たにトップ8に入るというのは、それくらい困難なことなのだと思います。ジャパンが目指しているのは、勝利の女神が否応なくほほえむような、誰もが応援してしまうような、愛される特別なチームにならないと足を踏み入れることはできない領域なのだと思う。

(リーチ選手は、そんな、特別な領域に足を踏み入れ始めている一人だと思います。試合前から試合後まで、すべての態度、姿勢、発言が素晴らしいです)

 

そう思うのも、イングランドと日本の試合のあとに続いた試合結果がものすごかったから。

スコットランドは地元に南アフリカを迎え、敗れたとは言え20−26の大激戦を演じました。そしてアイルランドは、地元にオールブラックスを迎え、16−9、黒の軍団をノートライに封じる完勝です。来年のワールドカップでは、この2つの、少なくともどちらかに勝たないと8強には進めない。

 

日本代表が戦っているステージは大変なところなのだと、改めて思います。

日本代表は8万人の観衆の前で成長を見せたと思います。エディさんの「日本は素晴らしかった。ものすごく成長している」という賛辞は外交辞令ではなかった気がします。だけど、それがワールドカップでの8強入りを保証するものでは全然ない。でも、その困難に挑むからこそ、ジャパンは応援する価値のあるチームなのだと思う。

 

そう感じる1日でした。

次はロシア戦です。

がんばれジャパン!

 

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  • プロフィール

    20110608-otomo.jpg

    大友信彦
    (おおとものぶひこ)

    1962年
    宮城県気仙沼市生まれ


    早稲田大学第二文学部卒業。
    1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』で活動。
    '87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

    ラグビー専門ウェブマガジンRugbyJapan365スーパーバイザー。

    『再起へのタックル』(洋泉社)
    『ザ・ワールドラグビー』(新潮社)
    『奇跡のラグビーマン 村田亙』(双葉社)
    『釜石ラグビーの挑戦』(水曜社)

    など著書多数。

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